この記事の監修者

土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:建物滅失登記など表示に関する登記全般。

経歴:開業以来21年間、滅失登記など登記に関する業務を行っています。
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「家を解体したあとの建物滅失登記を自分でしたい」
「父母の建物の滅失登記を自分でしようと思うのですが‥」
「建物滅失登記を自分でする具体的なやり方が知りたい」
「建物滅失登記の費用約5万円を節約したい」

このような理由で、建物の滅失登記を自分でしたいけど、
どうすれば良いのかわからないし、
わからない部分もいくつかあって困っている、
という人も多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では、建物滅失登記を自分でする方法について、
具体的なやり方と必要書類、注意点もすべてわかるように、
建物の滅失登記申請業務を行っている土地家屋調査士が、
くわしく解説いたします。

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この記事を読むと、建物滅失登記を自分でするやり方と、
自分でする際の注意点がわかり、滅失登記の費用約5万円を節約できます。

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建物滅失登記を自分でする方法

建物滅失登記をご自分でされる場合は、
次の1~7の流れで進めると、できるだけ間違いが少なくなり、
建物滅失の登記完了までスムーズに進めることができます。

  1. 滅失した建物の登記情報と建物図面を取得する。
  2. 滅失した建物が、登記上の建物かを現地で確認する。
  3. 建物滅失証明書を取壊し業者からもらう。
  4. 建物の滅失登記申請書を作成する。
  5. 滅失した建物の案内図と写真など添付書類を作成する。
  6. 滅失した建物の管轄法務局に登記申請書類を提出する。
  7. 滅失登記の完了後に、法務局から完了証などを受け取る。

それでは、1つ1つ具体的にご説明いたします。

1.滅失した建物の登記情報と建物図面を取得する。

建物滅失登記を自分でする場合、一番最初にすべきことは、
下図1と2のような滅失した建物の登記情報と建物図面を、
法務局などから取得することです。

滅失した建物の登記情報の例
(図1:滅失した建物の登記情報の例)
滅失した建物の建物図面の例
(図2:滅失した建物の建物図面の例)

なぜ、滅失した建物の登記情報と建物図面が必要かと言えば、
現地で取り壊された建物が、建物の形状や階数、位置的にも、
登記上の建物と全て一致しているかを確認するためです。

もし、建物の登記情報や建物図面の確認をしていない場合、
取り壊した建物とは違う建物の滅失登記を誤って申請したり、
そもそも、建物滅失登記の申請ではなく、
建物表題変更登記の申請をすべきだったということもあるからです。

なお、建物が非常に古い場合、
法務局に建物図面が無いこともありますので、
その場合は、公図を取得して、
敷地の形状などを確認すると良いです。

2.滅失した建物が、登記上の建物かを現地で確認する。

建物の登記情報と建物図面を入手できれば、
その資料を見ながら現地を見て、登記上の建物が、
本当に取り壊されているのかを確認します。

現地の状況
(現地の状況)

たとえば、取壊した建物の登記情報が、下図3のような場合、
現地を見て、建物の構造や屋根の種類、階数など、
似たような建物が建っていないかを確認します。

取壊した建物の登記情報の例
(図3:取壊した建物の登記情報の例)

そして、取壊した建物の建物図面が、下図4のような場合、
現地を見て、建物が建っていた位置に、
建物が建っていないかどうかや、
似たような建物が建っていないかどうかも確認するのです。

(図4:取壊した建物の建物図面の例)

もし、登記情報および建物図面の内容と、現地を見比べてみて、
登記上の建物と似たような建物が建っていれば、
取り壊した登記上の建物とは違う建物であることを確認するのです。

現地
(現地)

また、取壊した登記上の建物の所在地番と、
現地が一致しているかどうかも、
公図に記載されている土地の形状や、
建物図面の敷地の形状から、確認しておきましょう。

ただし、公図を見る場合には、縮尺不明の公図もあるため、
そのような公図の場合は、土地の形状が異なることもあり、
あくまで参考程度と考えておくと良いです。

公図の例
(公図の例)

3.建物滅失証明書を取壊し業者からもらう。

現地で建物が滅失していることを確認できれば、
下図5のような建物滅失証明書を作成します。

建物滅失証明書の例
(図5:建物滅失証明書の例)

建物滅失証明書を作成できれば、
取壊し業者に記名・押印、
又は署名・捺印をしてもらいます。

なお、取壊し業者の押印又は捺印については、
業者が法人の場合は、法人の実印で、
業者が個人の場合は、個人の実印であることが必要です。

そして、取壊し業者が法人の場合は、
法人の印鑑証明書も必要となり、
取壊し業者が個人の場合は、個人の印鑑証明書も必要になります。

法人の印鑑証明書の例
(法人の印鑑証明書の例)
個人の印鑑証明書の例
(個人の印鑑証明書の例)

ただし、取壊し業者が法人の場合は、
建物滅失の登記申請書の添付情報欄に、
会社法人等番号を記載すれば、
法人の印鑑証明書は省略できます。

また、建物滅失証明書については、自分で作成する前に、
取壊し業者に対して、建物滅失証明が欲しい旨を伝えれば、
作成してもらえることもあり、その方法でもかまいません。

いずれにしましても、建物滅失証明書に、
取壊し業者の記名・実印による押印、
又は署名・実印による捺印がされている必要があるということです。

4.建物の滅失登記申請書を作成する。

建物の滅失登記を申請する場合、下図6のような、
建物滅失登記申請書を1枚、法務局に提出する必要があります。

建物滅失登記申請書の例
(図6:建物滅失登記申請書の例)

建物滅失登記申請書には、登記の目的、添付情報、申請年月日、
申請する法務局名、申請人の住所・氏名・押印、
代理の場合は代理人の住所・氏名・押印と、
連絡先の電話番号を記載します。

また、滅失した建物の登記情報の記載内容のとおりに、
建物の所在地番や家屋番号、主たる建物、又は附属建物、
種類、構造、床面積などを記載します。

建物滅失登記申請書への申請人の押印や、
代理人の押印については、
認印でも、実印でも、どちらでもかまいません。

なお、登記原因及びその日付欄には、建物を取壊した場合、
「令和何年何月何日取壊し」のように、
取壊し完了日と、取壊しの旨を記載します。

もし、建物が焼けて無くなった場合には、
「令和何年何月何日焼失」のように、
建物が焼け落ちた日と、焼失の旨を記載するのです。

なお、建物滅失登記の申請書の記載例や書き方については、
建物滅失の登記申請書の様式と書き方」で、
くわしく解説しています。

5.滅失した建物の案内図と写真など添付書類を作成する。

建物滅失登記では、登記申請書や建物滅失証明書だけでなく、
通常、滅失した建物の案内図と、現地の写真なども、
添付書類として一緒に法務局に提出します。

滅失した建物の現地案内図は、下図7のように、
ネット上の地図などを印刷して、
現地の場所を赤矢印などで明確にしておくと良いです。

滅失した建物の現地案内図
(図7:滅失した建物の現地案内図)

また、現地の写真は、下図8のように、
更地になっている場合もあれば、
他にも建物が残っている場合もあります。

現地の写真
(図8:現地の写真)

いずれにしましても、建物が建っていた場所がわかるように、
赤矢印などで明確にしておくと良いです。

なお、生存中の父名義の建物や母名義などの建物の滅失登記を、
子や孫などが代わりに代理申請する場合には、
下図9のような委任状が必要になります。

委任状の例
(図9:委任状の例)

なお、建物の滅失登記に必要な書類については、
建物の滅失登記の必要書類は?」で、
くわしく解説しています。

6.滅失した建物の管轄法務局に登記申請書類を提出する。

建物滅失登記の申請書類が整いましたら、
このように、登記申請書と、添付書類を、
ホッチキスで左綴じして1つにします。

もし、登記申請の際に、法務局の受領印が欲しい場合には、
登記申請書をもう1枚提出すると良いです。

その場合、登記申請時に、受領印が欲しい旨を、
法務局の担当者に伝えると、
登記申請書1枚の方の上部に、受領印を押してもらえます。

7.滅失登記の完了後に、法務局から完了証などを受け取る。

法務局に建物滅失登記の申請書類を提出後、
通常、数日~1週間程度で、登記完了となります。

建物の滅失登記完了証の例
(建物の滅失登記完了証の例)

ただし、法務局の担当者が、現地調査に行く場合は、
もう少し日数がかかる場合もあります。

なお、法務局には、登記完了予定日が表示されていますので、
その日を登記完了日の目安にすると良いでしょう。

できれば、法務局に登記完了証を取りに行く前に、
登記が完了しているかどうかを、
電話で確認しておくと安心です。

建物滅失登記を自分でする際の3つの注意点

建物滅失登記を自分で申請する場合の注意点としては、
次の3点です。

  • 取壊した建物は、建物滅失登記の申請であってる?
  • 建物取壊し業者がわからない場合、どうすれば良い?
  • 取壊し年月日は、いつにすべき?

それぞれ、簡単にご回答いたします。

取壊した建物は、建物滅失登記の申請であってる?

取壊した建物が、ご自分の土地に建っていた建物で、
そのすべてを取り壊していれば、間違えないとは思いますが、
一部の建物が残っている場合には、注意が必要になります。

なぜなら、ご自分の土地に数棟の建物が建っていて、
その内の一部の建物を取り壊したということでしたら、
そもそも建物滅失登記の申請ではなく、
建物表題変更登記の申請が必要な可能性があるからです。

たとえば、次のような例では、
建物滅失登記の申請ではなく、
建物表題変更登記の申請をすべき例になります。

附属建物のみ取壊した例
(附属建物のみ取壊した例)

この例では、主たる建物の居宅は現地に残っていて、
附属建物の倉庫のみを取壊した例です。

このように、倉庫や車庫などの附属建物のみを取り壊した場合、
主たる建物は、まだ現地に残っているため、
附属建物の滅失による建物表題変更登記の申請が必要になります。

その点を間違えて、法務局に建物滅失登記を申請しても、
申請書類の作り直しや、申請の取下げで後戻りしてしまうため、
申請前に的確な判断が必要になるというわけです。

建物取壊し業者がわからない場合、どうすれば良い?

古い建物を、数年~十数年前に、すでに取り壊している場合、
いざ、建物滅失登記を申請しようとした際に、
解体業者の建物滅失証明書が必要になったけど、
建物を取壊した解体業者がわからないという場合があります。

また、親の代で既に建物を取壊しており、
すべて親が対応していたため、
取壊した業者がどこの業者なのかわからないという場合もあります。

そのような場合は、建物滅失証明書を作成しても、
取壊し業者に署名押印などをもらうことができないため、
下図10のような上申書という書面を作成して対応する方法があります。

上申書の例
(図10:上申書の例)

ただし、このような上申書を法務局に提出する際には、
建物滅失登記の申請前に、法務局の相談窓口で一度相談して、
確認してから、建物滅失登記を申請することをお勧めします。

取壊し年月日は、いつにすべき?

建物滅失登記の申請書には、下図11のように、
建物を取壊した年月日、又は、
焼失した年月日を記入することになります。

建物を取壊した年月日の記載例
(図11:建物を取壊した年月日の記載例)

建物が焼失した場合は、焼け落ちた日になるので、
焼失年月日の記入で迷うことはありません。

しかし、建物を取壊した場合は、取壊し業者が一定期間、
工事を行うため、取壊し年月日はいつにすべきかを、
迷われる方もいます。

通常は、取壊し工事の完了日が、取壊し年月日になります。

以上、建物滅失登記を自分でする方法と、
建物滅失登記を自分でする際の3つの注意点を解説いたしました。

なお、建物滅失登記の必要書類については、
建物の滅失登記の必要書類は?」で、
くわしく解説しています。

建物滅失登記の申請書の様式と書き方については、
建物滅失の登記申請書の様式と書き方」をご参照下さい。

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なお、建物滅失登記に関する内容については、
下記も合わせてご確認いただければと思います。

自分でできる不動産登記(第2版) [ 児島 充 ]

自分でできる不動産登記(第2版)

6訂版 わかりやすい不動産登記の申請手続 [ 日本法令不動産登記研究会 編 ]

6訂版 わかりやすい不動産登記の申請手続

また、建物の滅失登記の申請を、
自分で簡単にできる支援ソフトがあることを、
ご存知でしょうか?

建物の滅失登記を自分でできるだけ簡単にしたいという方は、
建物の滅失登記すいすい申請ファイル」を、
ご活用いただく方法があります。