この記事の監修者

土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:建物滅失登記など不動産の表示登記全般。

経歴:開業以来23年間、建物の滅失登記など登記関係業務を行っています。
土地家屋調査士のプロフィールはこちら

建物滅失登記の申請を代理人が行う場合には、
申請人からの委任状が必要になります。

ただ、委任状に記載すべき内容に不足があれば、
建物滅失登記の申請書類を法務局に提出後に、
補正作業などで困ることになってしまいます。

そこで、建物滅失登記の委任状について、
建物滅失登記の申請業務を行っている土地家屋調査士が、
具体的にわかりやすく解説致します。
※ケース毎の委任状のダウンロードも可能です。

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この記事を閲覧することで、建物滅失登記の委任状について、
どういった場合に、どんな委任状が必要なのか全てわかります。

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建物滅失登記の委任状のひな形と作成方法

下図は、建物滅失登記の委任状のひな形です。

建物滅失登記の委任状のひな形
(図:建物滅失登記の委任状のひな形)

このひな形は、個人から土地家屋調査士への委任状ですが、
個人から個人への委任にも使用できるものです。

建物滅失登記の委任状は、上図のひな形を参考(基本)にして、
申請内容に応じて作成することになります。

なお、委任状の用紙は、通常、A4サイズの用紙を縦にして作成します。

パソコンなどで作成して印刷しても良いですし、
すべて手書きで作成してもかまいません。

ただし、委任状には、次の1~7の内容の記載が必要です。

  1. 委任状というタイトル
  2. 誰が誰に委任するのかがわかる一文
  3. 委任する登記の目的
  4. 委任する内容(範囲)
  5. 委任した年月日
  6. 委任者の住所、氏名、印鑑の押印
  7. 不動産の表示

実際の委任状で言えば、下図のそれぞれの赤枠部分のことです。

委任状に記載すべき内容
(図:委任状に記載すべき内容)

それでは、上図1~7のそれぞれの内容について、
1つ1つ順番に解説いたします。

1.委任状というタイトル

委任状のタイトルは、下図1のように、
用紙の上の中央部に、大きめの文字で記載します。

委任状のタイトルの記載例
(図1:委任状のタイトルの記載例)

2.誰が誰に委任するのかがわかる一文

誰が誰に委任するのかがわかる一文は、
下図2のように記載します。

誰が誰に委任するのかがわかる一文の記載例
(図2:誰が誰に委任するのかがわかる一文の記載例)

上図2の例は、土地家屋調査士に委任する例で、
土地家屋調査士の事務所の住所と、
土地家屋調査士の氏名を記載します。

もし、個人に委任する場合は、
〇市〇町〇番〇号、〇〇〇〇の部分に、
受任者(委任される人)の住所と氏名を記載するのです。

なお、委任状に記載する受任者の住所については、
土地家屋調査士の場合は、登録上の事務所の住所を記載し、
個人の場合は、住民票上の住所を記載すると良いです。

3.委任する登記の目的

登記の目的は、下図3のように「建物滅失登記」と記載します。

登記の目的の記載例
(図3:登記の目的の記載例)

なお、単に「建物滅失」と記載してもかまいません。

4.委任する内容(範囲)

委任する内容は、下図4のように記載します。

委任する内容(範囲)の記載例
(図4:委任する内容(範囲)の記載例)

土地家屋調査士に建物滅失登記を委任する場合は、
上図4の記載例のような委任内容を、
すべて記載するのが通例です。

ただし、建物滅失登記の全ての委任ではなく、
登記所への申請と受領のみなど、
部分的に委任したいといった場合もあります。

その場合は、委任する内容に応じて記載すると良いです。

つまり、委任する内容や範囲については、
委任者(委任する人)が自由に決めて、
委任状に記載すると良いということです。

5.委任した年月日

委任した年月日は、下図5のように、実際に委任する年月日を記載します。

委任する年月日の記載例
(図5:委任する年月日の記載例)

通常、委任者が委任状に署名・押印した日、
又は記名・押印した日になります。

ただし、建物滅失登記を委任する年月日で、注意が必要なのは、
建物が実際に取り壊された日よりも前の日付ではなく、
登記申請書に記載する取壊し年月日以降の日付にすることです。

なぜなら、建物が取り壊されていない日では、
建物滅失登記を委任することはできないからです。

6.委任者の住所、氏名、印鑑の押印

委任者の住所、氏名、印鑑の押印は、下図6のように、
建物滅失登記の申請人の住所と氏名を記載して、
申請人の印鑑を押印します。

委任者の住所、氏名、印鑑の押印の記載例
(図6:委任者の住所、氏名、印鑑の押印の記載例)

なお、委任者の住所と氏名については、
委任者の住民票上の住所と氏名を記載し、
印鑑については、委任者の印鑑であれば、
認印でも、実印でも、どちらでもかまいません。

もし、建物滅失登記の申請人が2名以上の共有の場合には、
下図のように、委任者の住所、氏名をそれぞれ記載して、各自押印します。

(委任者が2名以上の場合)

共有の場合も、委任者の持分の記載は必要ありません。

ちなみに、滅失した建物の所有者(登記名義人)が、
2名以上の共有の場合には、その内の1人から、
建物の滅失登記を申請できるため、
その場合は、申請人になる方からの委任状だけでかまいません。

7.不動産の表示

委任状には、滅失登記の申請内容がわかるように、
下図7のように、登記申請書の不動産の表示と同じ内容を記載します。

不動産の表示の記載例
(図7:不動産の表示の記載例)

不動産の表示の書き方としては、所在、家屋番号、
主たる建物又は附属建物、種類、構造、床面積を、
滅失した建物の登記記録の内容の通りに記入して、
登記原因及び日付として、取壊し年月日を記入すると良いです。

なお、不動産の表示としては、不動産の所在地番と、
家屋番号を記載した上で、登記原因及びその日付として、
建物の取壊し年月日を記載するだけでもかまいません。

建物滅失登記の委任状には、自署が必要?

建物滅失登記の委任状には、代理人の住所・氏名と、
委任者の住所・氏名の記載が必要です。

そこで、それぞれの住所と氏名の記入については、
本人の自署が必要かどうか、迷われる人もいます。

結論としては、代理人の住所・氏名は、記名でかまいませんが、
委任者の住所・氏名は、原則、自署する必要があります。

建物滅失登記の委任状に、印鑑の押印は必要?

建物滅失登記の委任状には、受任者の印鑑の押印は不要ですが、
委任者の印鑑の押印は必要です。

委任状への委任者の印鑑の押印
(委任状への委任者の印鑑の押印)

印鑑の押印については、実印でも、認印でも、
どちらでもかまいません。

ただ、印影が薄くなったり、欠けたりしないように、
鮮明に押印する必要があります。

建物滅失登記の委任状は、どんな場合に必要?

建物滅失登記の委任状は、
滅失した建物の所有者(登記名義人)以外の人が、
代理人となって、建物滅失登記を申請する場合に必要になります。

たとえば、滅失した建物の所有者(登記名義人)が父親で、
子が建物滅失登記を代理で申請するような場合、
父親から子への委任状が必要になります。

もし、建物滅失登記を土地家屋調査士に頼む場合は、
土地家屋調査士が代理人となりますので、
滅失した建物の所有者(登記名義人)から、
土地家屋調査士への委任状が必要になります。

なお、滅失した建物の所有者(登記名義人)が、
すでに亡くなっていて、その建物の滅失登記の申請を、
相続人が申請する場合は、他の相続人からの委任状は必要ありません。

なぜなら、所有者(登記名義人)が亡くなった建物については、
その相続人の1人から、建物滅失登記を申請できるからです。

建物滅失登記の委任状は、いつ提出すれば良い?

滅失登記の申請に関する一切の権限を委任する場合は、
通常、建物の滅失登記の申請書類を管轄法務局に提出する際に、
委任状も一緒に提出します。

しかし、登記申請の取下げや、補正のみを委任する場合は、
法務局で登記申請を取下げたり、補正をする時に、
委任状を提出してもかまいません。

建物滅失登記の委任状のダウンロード

建物滅失登記の委任状のひな形や書き方はわかったけど、
自分で委任状を一から作成するのは大変、
という人も多いのではないでしょうか?

そこで、建物滅失登記の委任状の書式を、
下記でダウンロードできるようにしていますので、
ダウンロード後に、文字や数値を自由に変更してご使用下さい。

建物滅失登記の委任状のPDFダウンロード

建物滅失登記の委任状のエクセルダウンロード

以上、建物滅失登記の委任状について解説致しました。

なお、委任状は、建物滅失登記を代理申請する際に必要ですが、
他にも必要な書類があり、建物滅失登記の必要書類については、
建物の滅失登記の必要書類は?」で、
くわしく解説しています。

建物滅失の登記申請書の様式と書き方については、
建物の滅失登記申請書の様式と書き方」をご参照下さい。

建物滅失証明書の記入例と書き方については、
建物滅失証明書の記入例と書き方」で、
くわしく解説しています。

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