この記事の監修者

土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:建物滅失登記など不動産の表示登記全般。

経歴:開業以来23年間、建物の滅失登記など登記関係業務を行っています。
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建物滅失証明書は、不動産登記法第57条に従い、
取壊しによる建物滅失登記を申請する際に必要な書類です。

ただ、建物滅失証明書は、一般的な様式があり、
記入事項や書き方も、ある程度決まっていることをご存知ですか?

もし、建物滅失証明書に記入事項や、書き方に間違いがあれば、
建物滅失登記申請書類を法務局に提出後に、困ることもあります。

そこで、建物滅失証明書の記入例と書き方について、
建物の滅失登記申請業務を行っている土地家屋調査士が、
わかりやすく解説いたします。

この記事を読めば、建物滅失証明書の記入例や書き方がわかり、
建物滅失証明書で困ることはなくなるでしょう。

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建物滅失証明書とは?

建物滅失証明書とは、下図1のような様式の書面のことで、
建物の取壊しを行った工事請負人が、
建物を取壊したことを証明した書面になります。

建物滅失証明書の様式
(図1:建物滅失証明書の様式)

建物滅失証明書は、建物を取壊した場合に、
不動産登記法第57条に従って、
建物滅失登記を申請する際に必要な書類です。

不動産登記法第五十七条 

建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。

引用元: e-Gov法令検索.「不動産登記法 」. (参照 2025-5-10)

なお、建物滅失登記の申請先は、建物の管轄法務局になるため、
建物滅失証明書の提出先は、
取壊した建物を管轄していた法務局になります。

建物滅失証明書は誰が作成するもの?

建物滅失証明書は、建物の所有者が作成するか、又は、
建物を取壊した工事請負人(解体業者)が作成するものです。

建物滅失証明書は、建物の取壊しが完了した際に、
建物の取壊し工事請負人(解体業者)からもらえる場合もあります。

しかし、もらえていない場合は、建物の取壊し工事請負人に、
建物滅失証明書を発行して欲しい旨を伝える方法や、
建物の所有者の方で建物滅失証明書を作成して、
建物の取壊し工事請負人に、署名や押印などをしてもらう方法もあります。

取壊し工事請負人(解体業者)がわからない場合

建物を取壊したのが、数年前や、十数年以上前のことで、
建物の取壊し工事請負人(解体業者)がわからない場合や、
亡父又は亡母名義の建物で、亡父又は亡母が対応していたため、
建物の取壊し工事請負人(解体業者)がわからない場合があります。

その場合は、建物滅失証明書を入手することができないため、
建物滅失証明書に代わる上申書などで対応するしかありません。

上申書の様式は特に決まっておりませんが、
下図のような様式と文言の書面になります。

なお、土地家屋調査士に建物滅失登記を依頼した場合は、
取壊し工事請負人(解体業者)がわからない場合であっても、
通常、建物滅失証明書の問題を、すべて解決することができます。

建物が取壊しではなく、焼失した場合

建物の滅失の理由が、取壊しではなく、
焼失の場合は、建物滅失証明書ではなく、
下図3のような「り災証明書」を添付すると良いです。

り災証明書のイメージ
(図3:り災証明書のイメージ)

り災証明書は、焼失した建物の地域を管轄している消防署で、
通常、発行してもらえます。

なお、建物を取壊した場合も、火事などで焼失した場合も、
不動産登記法第57条で定められているように、
建物滅失登記を法務局に申請しなければなりません。

建物滅失証明書の記入例

建物滅失証明書の記入例
(図1:建物滅失証明書の記入例)

建物滅失証明書には、取壊し工事請負人の実印の押印が必要で、
工事請負人の印鑑証明書の添付も必要です。

工事請負人の実印の押印と印鑑証明書の添付が必要なのは、
作成された建物滅失証明書の真実性を確保するためです。

そのため、建物を取壊した工事請負人が個人の場合は、
個人の実印を押印し、個人の印鑑証明書も添付して、
法務局に建物滅失登記を申請します。

もし、建物を取壊した工事請負人が法人の場合は、
法人の実印を押印して、法人の代表者事項証明書と、
法務局で交付される法人の代表者の印鑑証明書も添付して、
法務局に建物滅失登記を申請するのです。

ただし、建物を取壊した工事請負人が法人の場合は、
下図2のように、建物滅失登記申請書の添付情報欄に、
その法人の会社法人等番号を記入すれば、
法人の代表者事項証明書と印鑑証明書の添付を省略できます。

建物滅失登記申請書の添付情報欄に会社法人等番号を記載した例
(図2:建物滅失登記申請書の添付情報欄に会社法人等番号を記載した例)

建物滅失証明書の書き方

建物滅失証明書に記入すべき内容は、次の7つです。

  • タイトル
  • 建物の表示
  • 滅失の理由
  • 取壊した建物の所有者
  • 建物を取壊したことを証明する一文
  • 建物を取壊したことを証明した年月日
  • 建物を取壊した工事請負人の住所及び氏名又は名称

それでは、建物滅失証明書の書き方について、
1つ1つ順番にわかりやすくご説明いたします。

タイトルの書き方

建物滅失証明書のタイトルは、
下図4のように、用紙の上の中央部分に、
大きめの文字で「建物滅失証明書」と記載します。

建物滅失証明書のタイトルの記入例
(図4:建物滅失証明書のタイトルの記入例)

なお、建物滅失証明書は、建物取壊し証明書とも呼ばれる書面です。

そのため、タイトルを「家屋取毀証明書」、
又は「建物取毀証明書」、
単に「取壊証明書」と記入してもかまいません。

建物の表示の書き方

建物の表示は、下図5のように、取壊した建物の所在地番と、
家屋番号を、取壊した建物の登記記録の内容の通りに記入します。

建物の表示の記入例
(図5:建物の表示の記入例)

なお、家屋番号の下に、取壊した建物の種類、構造、床面積も、
記入してもかまいません。

ただ、建物の登記記録の内容は、下図6のような登記情報を、
ネット上で取得するか、又は、法務局(登記所)で、
取壊した建物の最新の登記事項要約書を取得して、
その内容の通りに記入することをお勧めします。

登記情報のイメージ
(図6:登記情報のイメージ)

もし、以前取得した建物の登記事項証明書や、
登記事項要約書がお手元にある場合、
現在も内容に変わりが無いのであれば、
その内容を参考にして、所在地番と家屋番号を記入しても良いでしょう。

滅失の理由の書き方

滅失の理由は、下図7のように、建物を取壊した年月日と、
取壊しの旨を記入します。

滅失の理由の書き方
(図7:滅失の理由の書き方)

建物を取壊した年月日は、建物の取壊し工事を完了した日にするのが通例です。

そのため、取壊し工事の代金を支払った日でもなければ、
工事請負人から取壊し工事完了の連絡を受けた日でもなく、
建物の柱や梁など主要構造物などが実際に取り壊されて、
建物としての効用を果たすことができなくなった日になります。

なお、建物の取壊し工事を完了した年月日については、
通常、建物の取壊し工事請負人にその日付を確認すると教えてもらえます。

もし、建物を取壊したのがかなり前のことで、
建物の取壊し年月日の日付が不明な場合や、月日が不明な場合には、
「〇年〇月日不詳取壊し」又は「〇年月日不詳取壊し」のように記入すると良いです。

ただし、ここに記入する取壊し年月日は、
建物滅失登記申請書に記入する取壊し年月日と、
一致するよう記入することに注意が必要です。

取壊した建物の所有者の書き方

取壊した建物の所有者は、下図8のように、
所有者が個人の場合は、住所と氏名を記入します。

取壊した建物の所有者の書き方
(図8:取壊した建物の所有者の書き方)

もし、取壊した建物の所有者が法人の場合には、
下図9のように、法人の住所と、
法人の名称および法人の代表者の氏名を記入します。

取壊した建物の所有者が法人の場合の所有者の書き方
(図9:取壊した建物の所有者が法人の場合の所有者の書き方)

なお、取壊した建物の所有者が個人の場合も、
法人の場合も、建物滅失証明書への所有者の押印は不要です。

また、建物の所有者というのは、下図10のように、
法務局の登記記録の権利部(甲区)に、
所有者として記録されている個人又は法人のことです。

法務局の登記記録の権利部(甲区)のイメージ
(図10:法務局の登記記録の権利部(甲区)のイメージ)

そのため、建物の所有者を記入する際にも、
登記情報又は登記事項要約書などで、
登記上の所有者の住所と氏名又は名称を確認すると良いです。

もし、市区町村役所で登録している現住所と、
登記上の所有者の住所が異なる場合には、
市区町村役所で登録している現住所を記入します。

その場合、登記上の住所と現住所が記載された住民票など、
建物滅失登記の必要書類となる住所証明情報によって、
住所の変遷を証明することになります。

建物を取壊したことを証明する一文の書き方

建物を取壊したことを証明する一文は、
下図11のように記入します。

建物を取壊したことを証明する一文の書き方
(図11:建物を取壊したことを証明する一文の書き方)

建物を取壊したことを証明した年月日

建物を取壊したことを証明した年月日は、
下図12のように記入します。

建物を取壊したことを証明した年月日
(図12:建物を取壊したことを証明した年月日の記入例)

建物を取壊したことを証明した年月日は、
取壊し工事請負人が、建物を取壊したことを証明するため、
通常、署名・押印した日を記入しますので、
建物の取壊し完了日以降の日付になります。

建物を取壊した工事請負人の住所及び氏名又は名称の書き方

建物を取壊した工事請負人の住所及び氏名又は名称は、
下図13のように記入します。

建物を取壊した工事請負人の住所及び氏名又は名称の記入例
(図13:建物を取壊した工事請負人の住所及び氏名又は名称の記入例)

建物を取壊した工事請負人が個人の場合は、
個人の住所と氏名を記入して、個人の実印を押印し、
個人の印鑑証明書を添付して完成になります。

工事請負人の住所と氏名は、建物を取壊した本人が署名して、
実印を押印する方法でも、記名して実印を押印する方法でも、
どちらでもかまいません。

建物を取壊した工事請負人が法人の場合は、
法人の住所と、法人の名称および代表者の氏名を記入して、
法人の実印を押印し、法人の印鑑証明書を添付して完成になります。

法人の場合も、建物を取壊した法人の代表者が署名して、
実印を押印する方法でも、記名して実印を押印する方法でも、
社判を押して実印を押印する方法でもかまいません。

以上、建物滅失証明書の記入例と書き方について解説致しました。

建物滅失証明書のダウンロード

建物滅失証明書の様式と記入例につきましては、
pdf又はエクセルによる様式と記入例を、
下記リストからダウンロードしていただき、
ご自由にお使いいただければと思います。

建物滅失証明書のpdfダウンロード一覧

建物滅失証明書のエクセルダウンロード一覧

なお、建物滅失証明書は、建物滅失登記の必要書類ですが、
建物滅失登記では、他にも必要な書類があり、
建物の滅失登記の必要書類は?」でくわしく解説しています。

建物滅失登記に必要な登記申請書の様式と書き方については、
建物の滅失登記申請書の様式と書き方」をご参照下さい。

建物の滅失登記をご自分でする方法については、
建物の滅失登記を自分でする方法(費用約5万円の節約)」で、
くわしく解説しています。